2011年8月12日金曜日

汝らの行くところ汝らがポリスなり

アーレントのポリス(都市国家)にまつわる説明は、僕には、今日の企業活動におけるブランディング戦略ついて言及しているように思われる。

そこで、『人間の条件』の中から気になった箇所を抜き出してみる。
…ポリスという形で共生している人びとの生活は、活動と言論という人間の活動力の中で最も空虚な活動力を不滅にし、活動と言論の結果である行為と物語という人工の「生産物[A]」の中で最もはかなく触知できない生産物を不滅にするように思われたのである。p318-319
このようなギリシャ人の自己解釈によれば、政治領域は、共同の活動、つまり「ことばと行為の共有[B]」から生まれてくる。p319
正確にいえば、ポリスというのは、ある一定の物理的場所を占める都市=国家ではない。むしろ、それは、共に活動し、共に語ることから生まれる人びとの組織である。そして、このポリスの真の空間は、共に行動し、共に語るというこの目的の為に共生する人びとの間に生まれるものであって、それらの人びとが、たまたまどこいるかということとは無関係である。「汝らの行くところ汝らがポリスなり[C]」という有名なことばは単にギリシャの植民の合い言葉になっただけではない。p320
それぞれの引用の中に、着目する3つのことば[A][B][C]とつけた。
企業ブランディングに関わって来られている方は、この3つのことばがそれぞれ、

  • [A]Artifact(生産物)
  • [B]Behavior(行為)
  • [C]Concept(概念)

に当たると直感されているかもしれない。

ブランディング戦略では、不特定多数の人びとに対して同じことばや行為を繰り返し使うことは極めて重要な戦術とされている。しかし、それは、最終的な生産物を消費者に届けることを目標とするからであり、そこで作られた生産物が、それまでのことばや行為の延長にある意味付けがなされるものであることは言うまでもない。同様に、ことばにせよ、行為にせよ、表現者はその裏付けとなるコンセプトを共有することから、全体のブランディング構築が始まる。

このように考えてみると、「汝らの行くところ汝らがポリスなり」は、素晴らしいブランディング・メッセージになっている!

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